於レ是八上比賣答２八十�~１言。吾者不レ聞２汝等之言１。將レ嫁２大穴牟遲�~１。故爾八十�~怒。欲レ殺２大穴牟遲�~１共議而。至２伯伎國之手間山本１云。赤猪在２此山１。故和禮＜此二字以レ音＞共追下者。汝待取。若不２待取１者。必將レ殺レ汝云而。以レ火燒２似レ猪大石１而。轉落。爾追下。取時。即於２其石１所２燒著１而死。爾其御祖命哭患而。參＝上２于天１。請２�~産巣日之命１時。乃遣３キサ（討の下に虫）貝比賣與２蛤貝比賣１。令２作活１。爾キサ（討の下に虫）貝比賣岐佐宜＜此三字以レ音＞集而。蛤貝比賣持レ水而。塗２母乳汁１者。成２麗壯夫１＜訓２壯夫１云２袁等古１＞而出遊行。

訓読：ここにヤカミヒメ、ヤソガミにこたえけらく、「アはイマシたちのコトはきかじ、オオナムジのカミにアワナ」という。カレここにヤソガミいかりて、オオナムジのカミをころさんとアイたばかりて、ハハキのクニのテマのヤマもとにいたりていいけるは、「このヤマにアカイあるなり。かれワレどもオイくだりなば、イマシまちとれ。モシまちとらずは、かならずイマシをころさん」といいて、イににたるオオイシをヒもてやきて、まろばしオトシき。カレおいくだり、とるときに、そのイシにヤキつかえてミウセたまいき。ここにそのミオヤのミコトなきうれえて、アメにマイのぼりて、カミムスビのミコトにもうしたまうときに、すなはちキサガイヒトとウムギヒメとをオコセて、ツクリいかさしめたまう。かれキサガイヒメキサゲこがして、ウムギヒメみずをもちて、オモのチシルとヌリしかば、うるわしきオトコになりてイデあるきき。

口語訳：八上比賣は八十神たちの求婚に答えて、「私はあなたたちの言うことは聞きたくありません。大穴牟遲神の妻になりたいと思います。」と言った。八十神たちは怒り、いっそ大穴牟遲神を殺してしまおうと共謀して、伯耆の手間山の麓に到ったとき、大穴牟遲神に「この山に大きな赤猪が住んでいる。われわれは上から猪を追い落とすから、お前は待ち受けて捕らえろ。待っていないなら、お前を殺すぞ」と言った。そして猪のように見える大きな石を火で焼き、転がし落とした。大穴牟遲神はそれを待ち受けて、抱き留めたとき、石に焼き付いて死んでしまった。その御祖の神は泣き憂い、天に昇って神産巣日之命に訴えた。すぐにキサ貝比賣と蛤貝比賣を遣わして蘇生させた。その様子はキサ貝比賣が貝殻を削って粉を焼き、蛤貝比賣はそれを水で母の乳の汁として死体に塗りつけると、美しい男になって甦り、出て歩き回ったのである。

「答２八十神１（やそがみにこたえけらく）」。この前に八十神たちの求婚場面があって然るべきだが、それを省略してすぐに答えを書いている。だが何かもの足りぬ感じのする箇所である。○「不レ聞（きかじ）」は承知しないということである。○「將レ嫁」は「あわな」と読む。「な」が「む」と同じように古い言葉であることは既述した。だがこれが先に兎を苦しめたのと助けたのと、その行為の善悪を見て善の方に心を寄せたのか、または大穴牟遲神が初めから特別優れた神と分かっていて、特に理由もなく心を惹かれたということなのか、よく分からない。しかしこの妻問いの件は兎のことに関連しているのだから、菟神の霊の働きであるに違いない。○怒（いかりて）の字は、一本には「忿」とある。○手間山本（てまのやまもと）。和名抄に伯耆国會見郡の天萬郷がある。これである。出雲国風土記の意宇郡の段に、「道が国の東の境、手間の関に通している」と書かれ、【ある書には今、出雲国意宇郡の築野村、間潟（まかた）の海中に「手間の天神」というのがあると書かれている。】古今和歌六帖（？）の関の歌に「八雲立つ出雲の国の手間の関、いかなるてまに君障（さわ）るらん」、「待てしばし、人知り見むや我がせこを、留（とど）めかねてぞ手間と名付けし」があり、堀河百首に「さりともと思ひしかども八雲立つ、てまのせきにも秋はとまらず」もある。両国の境なので、伯耆とも出雲とも考えたのだろう。【それとも郷（さと）は伯耆、関は出雲に属していたか。どちらにしても、他の場所ではない。○旧事紀に手向山とあるのは誤写であろう。】○赤猪（あかい）。書紀の神功の巻にも見える。ここは石を火に焼いて騙そうとしているので、「赤」と色を言っているのである。記中には、他に白猪というのも登場する。和名抄によれば「爾雅の注にいわく、猪は一名テイ（彖の上の部分に「比」の間に「矢」の形）、和名『い』、兼名苑にいわく、一名豕、方言の注にいわく、豚は豕の子である」と書かれている。ここの文は、「このヤマにアカイあるなり」と読む。○和禮共。三字を続けて「われども」と読む。「和禮」は我、吾とも書くべきところを仮字に書き、「音で読め」と注まで付けているのは、過度に煩雑なようだが、この記中にところどころ同様な箇所があるのは、甚だ古い書にそうあったのをそのまま伝えているのではなかろうか。○追下者（おいくだりなば）。「下る」というのは猪を下すというのでなく、八十神たちが猪を追って山を下るのである。同じ言葉が次にもあるのと考え合わせるべきである。○待取（まちとれ）は、普通はただ待ち受ける意味に言い、「取る」は軽い意味しかないが、ここではむしろ「取る」の方に意味がある。山の下にいて、待ち受けて捕らえよということだ。○大石は「おおいし＜旧仮名：オホイシ＞」と読む。白檮原の朝（神武天皇）の段の歌に「意斐志（オヒシ：おいし）」【「斐（ヒ）」は「富伊（ホイ）」が縮まったのである。】とあるのによる。「いわ」と読んではいけない。○追下取（おいくだりとりて）。この「追い下る」のも八十神たちが追い下るのである。この前に言った言葉に対応している。【これを大穴牟遲神が追い下ったとすれば、「待ち取れ」という言にたがう。前記の「追い下る」も「猪を追い下す」という意味でないことを考えよ。前後で同じ言葉の意味が変わる理由がない。仮にこれも石を下すこととすれば、直前に「転落」とあるので、言葉が重なって煩雑になる。だからここは、転落させた石を追って、八十神たちが追い下るのだ。】「取る」は大穴牟遲神が待ち受けて取るのである。そうであれば「追い下るを取る」と「を」を付けて解釈すべきだと思う人もあるだろうが、それとは少し意味が違う。【「取」の字を上に置かない背、下に続けているのを考えよ。＜訳者註：「追い下るを取る」なら、漢文では「取２追下１」の形になる。＞】他の人の行為と、主体となる人の動作とをこう引き続けて一つの語のように言うのも、古言の一つの格だ。「追い下った」、「取った」、という感じである。出雲国風土記には「意宇郡の宍道郷は郡家の真西卅七里にあり、天下を造った大神が追った猪の像が南の山に二つ、【一つは長さ二丈七尺、高さ一丈、周囲は五丈七尺。もう一つは長さ二丈五尺、高さ八尺、周囲は四丈一尺。】その猪を追った犬の像、【長さ一丈、高さ四尺、周囲は一丈九尺】があり、その形は石であって、猪や犬にそっくりである。今もまだそのままにある。そこで宍道（ししじ）という」と書かれている。【「天下を造った大神」とは大穴牟遲神のことだ。だがこの宍道郷は手間山から遙かに隔たっているので、別のことだろうか。または単に異伝だろうか。】この神がまたしても人の言うまま、疑いも抱かずこうしたのは、前に袋を負って従者のように従ったのと同じ＜大事を成す者は、小事にこだわらないため、かえって愚鈍に見えるということ＞である。○御祖命（みおやのみこと）は、大穴牟遲神の母であるから、刺国若比賣のことだ。記中、「御祖」とはすべて母を言う。山城の賀茂御祖（かものみおや）神社（下鴨神社）などもそうだ。そもそも「おや」とは父のことを言うのが本来だろうが、母について特に「御祖」と言ったのは、子は母のもとで育つため、父よりも睦まじく、同じ家に暮らしているので、日常のことについても、「おや」とはまず母のことをそう呼んだからである。【この記が上代の心を伝えているのは、総じてこういう部分である。「親」と書かないで「祖」と書いているのは、古くは「おや」と言えば父母に限らず、遠い先祖にも言ったからだ。このように、呼び名が同じだから、父母にもその言葉を借りて言った。いにしえにはよくあった言葉遣いなのである。続日本紀の十五に「祖子（おやこ）」とも書いている。】中巻の終わりの部分に「秋山之下氷壮夫（あきやまのしたびおとこ）」、「春山之霞壮夫（はるやまのかすみおとこ）」という兄弟の神が「伊豆志袁登賣（いずしおとめ）」の神に求愛する場面で、母があれこれと謀計を巡らした話が出ているが、この段とよく似ている。こうしたことも、父は知らずにいて、むしろ母が中心となって執り行ったのは、特に子と親しかったからだろう。○「請２神産巣日之命１（かみむすびのみことにもうし）」というのは、上記の事情を説明して、救命を請い願ったのである。産霊（むすび）という名の意味【伝二の十一、十二葉に述べた。】を考え合わせよ。○キサ（討の下に虫）貝比賣（きさがいひめ）。「キサ（討の下に虫）」は、蚶を「甘の下に虫」とも書いたのを写し誤ったものだ。【新井氏の東雅の蚶の條に、この段を引いて蚶貝姫（きさがいひめ）と読んでいるのも、「キサ（討の下に虫）」を「蚶」の誤りと考えたからだろう。】したがって「きさがい」と読む。和名抄では「唐韻にいわく、蚶は蚌の類で、形ははまぐりのように円く厚い。殻には縦横に条理がある。即ち今のカン（魚＋甘）である。また辨色立成にいわく、和名『きさ』」という。これは本草に「魁蛤」とあって、今「赤貝」というものだ。出羽の国の「きさかた（象潟）」という地名も、延喜式には「蚶方」と書いてある。倭姫命世記に「阿佐加々多爾伎佐宇阿佐留（あざかガタにキサうアサル）」とあるのも、「蚶をあさる」ということだろうか。ここで「キサ（討の下に虫）」を「蚶」とした理由は、次に述べる。【延佳の考察によると、「キサ（討の下に虫）の字は字書にない。旧事紀ではこれを『訓黒』の二字に書いている。また『遣』の字は同書に『造』と書いているが、これまた誤字か。『告』の字を書くべきである。つまり『黒貝姫に告げ訓（おし）えた』のである。黒貝は和名『いがい』である」という。和名抄では「爾雅の註にいわく、貽貝は一名黒貝、和名『いがい』」とあるので、黒貝は「いがい」であろうが、この和名抄の説は信じられない。爾雅では、種々の貝の色を挙げた中に「玄貝は貽貝」とあり、注には「黒色の貝である」というが、「一名黒貝」という文はない。書紀纂疏には「黒色の貝を貽貝という」とある。すると、これは単に黒い貝殻のことであるのに、これを「いがい」に当てたのはどうだろうか。「貽（い）」の字音によって思い違ったのだろうか。「いがい」は本草に「淡菜、一名東海夫人」とあるもので、今の世でも「いがい」と呼ぶ。新撰字鏡には「ゾウ（？）（虫＋造）はイキ（虫＋或）である。『いがい』」とある。字書には「ゾウは海の虫、蛤の類」とある。これに黒貝という呼び名があることは、どこにも見当たらない。であれば、旧事紀で「黒貝」と書いているのが正しいとしても、それを「いがい」と読むのは当たらない。それに「キサ（討の下に虫）」を「訓黒」の二字に書いているのは誤写である。この名が初めて出たところでは「訓（おしう）」と読むこともできるが、次に出たところでも「訓黒」とあるのは読みようがない。「訓」の字に用がなく、余って聞こえる。こういうのは誤写の印だ、また「遣（やる）」を「造」と書くのも、それを「告」とするのも、すべて誤っている。「キサ（討の下に虫）」の字を一本に「イ（尉の下に虫：シロアリの意）」と書き、他の一本に「ケン？（言＋リットウの下に虫）」と書いてあるのも、これらの字は貝の類を表す字ではないから、やはり間違いだろう。あれこれ考えて、あるいは牡蠣の殻であろうか、または川蜷のたぐいを色が黒いので「河黒貝」と書いたのかなどとも考えたが、どれもよくない。やっとのことで蚶だろうと思いついたわけである。】出雲国風土記に「御祖神魂（かみむすび）の命の御子、支佐加比賣（きさかひめ）の命」【一本には「支佐加比比賣（きさかいひめ）」とある。】とあるのはこの神か。○蛤貝比賣は「うむぎひめ」と読む。というのは、書紀に、景行天皇が東国を巡ったとき、そこの海の白蛤【新撰姓氏録には「大蛤」と書いてある。】をなますに造って奉った記事がある。これを「うむぎ」と読んでいる。和名抄には「蚌蛤（ほうこう）は一名含漿、和名『はまぐり』、海蛤は、和名『うむぎのかい』、文蛤は和名『いたやがい』」と分けて述べられているが、蛤というのは「はまぐり」の類の貝の総称で、【上記の三つの漢名は、かの国でも互いに混同されて詳細な区別はない。わが国でもいにしえ人の心を考えれば、区別する必要はあるまい。】ここに挙げられた二つの和名のうち、「うむぎ」というのこそ古語である。【あとの二つは、その中で後に新たに作った分類だ。そのため語の様子も「うむぎ」が古く、他の二つはやや新しい。】新撰字鏡でも、蚶、シュウ（虫＋衆：バッタの類）、シャ？（虫＋沙）などの字をいずれも「うむぎ」と記して、他の二つは見えない。【とすれば、もとはどれも「うむぎ」と言ったのを、やや後にはそのうち小さいのを「浜栗（はまぐり）」と名付け、大きいのはもとのままに呼び、殻に文様があるのを板屋貝と名付けたのだろう。板屋貝とは、その文様が板屋根の葺目に似ているからであろう。ところが後には、ついに「うむぎ」という呼び名はなくなって、大小すべて「はまぐり」と呼ぶようになったと思われる。ところで、ここに出る「蛤貝」を延佳本で「オフカヒ（おうかい）」と呼んでいるのは、和名抄に「唐韻にいわく、『蛤は古三の反、一の音は含』、辨色立成にいわく『オフ（おう）』、本朝式の文に『白貝』の二字を用いる。爾雅にいわく、貝が水中にいるのを蛤という」とあるのによったものだろう。しかし和名抄の今の本の、「蛤」の文字は誤字であって、古い本に「カン（虫＋含）」とあるのが正しい。それは「古三の反（子音コ、サンの母音）」とも「一の音は含」ともあるので分かるし、また爾雅も考えるべきである。したがって、ここで蛤貝を「おうかい」と読む根拠はない。このカン（虫＋含）は、爾雅によって考えると、「陸にいる貝はヒョウ（貝＋犬三つ）、水にいる貝はカン（貝＋函）、音は含」とあって、書紀纂疏に「水にいる貝をカン（貝＋函）と名付ける」とある。つまりカン（貝＋函）は水にいる貝の総称である。これをカン（虫＋含）と書いたのは、含と函が音も意味も通じるからである。このように水にいる貝の総称の字を「オフ（おう）」というただ一種の貝の名に当てたのは、上記の辨色立成だけというわけでなく、新撰字鏡にも「カン（虫＋含）は『オフ（おう）』、または『あわい』」とある。これはまた爾雅に「ラ（羸の下部の羊を虫に置き換えた字）の小さいものはカン（貝＋函）」ともあることによっているのだろうか。本朝式（延喜式？）に「白貝（おう）」と書いているのと、上記のように黒色の貝の総称を「いがい」としたのを相照らして考えると、一方は黒貝とも書き、他方は白貝とも書いて、色をその貝の種類の名としたのだろう。するとここでもキサ（討の下に虫）貝は黒貝であって「いがい」、蛤貝はこれもカン（虫＋含）貝の誤写で「おうかい」であり、黒白の色の対照で、この二種を言っているのかとも思われるだろうが、黒貝では「訓」の字が余分であり、また「訓」の字を除けば、「黒」の字を「キサ（討の下に虫）」に誤る理由が見当たらず、また「きさげ」という語にも関係がない。したがって、蛤の字はカン（虫＋含）の誤写でなく、「おう」ではないだろう。】出雲国風土記に「神魂（かみむすび）命の御子、宇武賀比賣（うむがひめ）命という名が見える。【前に引いた支佐加比賣（きさかひめ）もこれも、ともに嶋根郡の條にある。またいずれも神魂（かみむすび）命の御子とある。ここに出る二柱の比賣と同じ神ではないだろうか。】ところで、この二柱の比賣は、要するに蚶貝（きさがい）と蛤貝（うむぎ）のことである。これを「比賣」と言っているのは、雉を鳴女（なきめ）と言い、魚の名にも赤女、口女、鯛女などとみな女と決まったように言うのと同じ例と考えるべきだが、ここで単に女と言わないで比賣と名付けているのは、その功績を称えて神とした呼び名だからである。○遣は「おこせて」と読む。それは向こうからここにおこした（寄こした）からである。○令作活は「つくりいかさしめたまう」と読む。【「令レ令レ活（いかさしめ）」である。活は大穴牟遲神のことであり、「令レ活（いかす）」は二比賣のことであり、上の「令」は神産巣日命のことだ。】作は繕い治めることで、国を作るというのと同じ「作る」である。この令の字は、旧印本も延佳本も「命」の字を書いている＜蛤貝比賣の命となっている＞が、誤写である。【尊貴の位が同じもう一柱の比賣には命（みこと）を付けず、またこの名が次に出たときにも命を付けないのに、ここにだけこの字があるはずはない。】ここではある一本によった。○岐佐宜（きさげ）は研（きしら）し削ることである。【和名抄に「碾は『きしる』」。】「しら」を縮めて「さ」と言い、下の「し」を省いたのである。また「削る」を「げ」と一音に言った例は、弓削（ゆみけずり）を「ゆげ」と言うのが、まさにそれである。【「宜」の字は、この記では必ず「げ」の仮字（かな）である。○體源抄の「笙五管の名物」の中に、「幾佐氣繪（きさげえ）」というのがある。これはまた「蚶界繪」とも書く。】今の世の言で物を「こそげる」と言うのはこの「きさげ」が訛ったもので、意味は同じだ。○「集」は、師（賀茂真淵）の考察で「焦」の誤りだろうとしたのがよい。「こがし」と読むべきである。蚶貝がその殻を削り、焼き焦がして粉にしたのである。ここでこの功績を挙げたことによって、その貝は「きさがい」と呼ばれるようになったのだ。だからこの言葉と相照らして、キサ（討の下に虫）は蚶（きさ）であると納得すべきである。【師は「黒貝（いがい）比賣は岐佐宜（きさぎ）を焦がして」と読み、「岐佐」は蚶であると言った。しかし「黒貝」が誤りであることは既に述べた通りで、もし黒貝であればその黒貝の功績を語るべきなのに、別種の貝を用いたのでは、黒貝の出番はない。とにかくキサ（討の下に虫）貝の名と「岐佐宜」という言葉と、相応しないのはどうだろうか。またその読み方では「宜」の字も余分なように思われる。そもそもこの言葉は解釈が難しく、私も初めはいろいろに考えた。「岐佐宜」の上に「比」が脱け落ち、本来は「ひきさげ」であって「焦げたのを引き下げ」と下から返って読むのではないか。「焦げた」とは焼き付いた死体であろうかと思い、また岐佐の木のことで、「宜」は「木」のことかと思い、あるいはこれも蚶貝そのもののことで、「宜」は貝が縮まった語であろうか、などと考えたものだが、どれも良くない。】○「持レ水而（みずをもちて）」。蛤という貝は、内部にたっぷり水を含んでいるものである。【「蚌蛤は一名含漿」と漢籍にもあるのを考えよ。】これを真福寺本や延佳本には「待承（まちうけ）」【旧事紀には「侍承」とある。】とあるが、それでは「岐佐宜（きさげ）焦がして」と言ったのとうまく対応しない。○「塗２母乳汁１者」は、「オモのチシルとぬれば」と読む。【師は「塗」の上に「如」が脱けているのではないかと言ったが、そうであれば「如２母乳汁１塗者」と「塗」の字は下にあるはずなのにそうでないのは、そうではないからだ。】母（おも）は乳母（ちおも）を言う。すべて「おも」というのは実母だろうと乳母だろうと、子に乳を飲ませる人を言うのだから、実母のことと解しても間違いではない。【母を「おも」というのも、乳を飲ませて養うからである。乳を飲ませない母までもすべて「おも」と言うのは間違いだ。】しかしながら、中巻玉垣の宮（垂仁天皇）の段に「取２御母１（みおもてをとり）」」とあるのも乳母（ちおも）のことである。これについては、そこ【伝廿四の五十六葉】で詳しく言う。乳汁の二字は、単に「ち」と読んでもいいように思われるが、「ち」は本来出るところの名であって、出た汁の呼び名ではない。それを出た汁の名ともしたのは後に省いた言い方である。ここで言っているのは、およそあらゆる傷に、母の乳を塗りつければ効能があるので、【この方法は、上代には一般的だったのだろう。】ここで蛤貝の水を、あたかもそのように塗ったということだ。したがって「ちしると」と読むべきだと言うのである。宇津保物語の俊蔭の巻に「紅葉の雫を乳ぶさとなめつつ、ありふるに云々」とある「と」と同じである。【万葉巻十四（３４００）の「信濃なるちぐまのかはのさざれしも、きみしふみてば多麻等比呂波牟（たまとひろはむ）」、この「等」も同じ使い方だ。】それは、キサ貝を削って焦がした粉を、蛤（うむぎ）の水で溶いて、母の乳汁を塗るように塗ったわけだ。「うむぎ」という語は母貝（おもがい）が縮まった語で、【それを「うむぎの貝」というのは、後世の重言だ。】ここで母の乳汁を塗るように塗って功績を成したので、その名が付いたのである。ところで、この二人の貝比賣については、もう一つの考えもある。それは、単に貝のことでなく、普通の神でもあり得るという考えだ。蚶貝比賣が蚶貝をきさげ焦がして、蛤貝比賣は蛤貝の水を持って、ということなのを、その用いた貝の名を神の名に譲って省いたのかも知れない。そういう書き方もある。こうして用いた貝が功績を挙げたので、貝の名が神の名として讃えられるようになった、という考えだ。【この解釈も捨てがたいので書いた。】○麗壯夫（うるわしきおとこ）。麗しきとは、ここでは火傷した皮膚が元通りに癒えたという意味を含んで言っている。壯夫（おとこ）とは字の通り少壮であることを言っているのは、前述した。○遊行は「あるきき」と読む。【下の「き」は助辞である。】万葉巻三【四十七丁】（４２５）に「公之阿流久爾（きみがアルクに）」、同巻五【九丁】（８０４）に「阿蘇比阿留伎斯（あそびアルキし）」、巻十八【三十五丁】（４１３０）に「安流氣騰（アルケど）」などの例がある。【書紀の「歩行」の訓や中古の物語などに「ありく」という読みばかり見えるので、「ありく」というのが雅な言い方のように思われるだろうが、それはかえって新しい言い方である。】

於レ是八十�~見。且欺率＝入２山１而。切＝伏２大樹１。茹レ矢打＝立２其木１。令レ入２其中１。即打＝離２其氷目矢１而拷殺也。爾亦其御祖命哭乍求者。得レ見。即拆２其木１而。取出活。告２其子１言。汝有２此間１者。遂爲２八十�~１所レ滅。乃速＝遣２於木國之大屋毘古�~之御所１。爾八十�~覓追臻而。矢刺之時。自２木俣１漏逃而去。

訓読：ここにヤソガミみて、またアザムキてヤマにいていりて、オオギをきりふせ、ヤをはめそのキにうちたて、そのナカにいらしめて、すなわちそのヒメヤをうちハナチテうちコロシき。カレまたそのミオヤのミコト、なきつつまげば、みえて、すなわちそのキをさきて、トリいでイカシテ、そのミコにノリたまわく、「イマシここにあらば、ついにヤソガミにほろぼさえなん」とノリたまいて、すなわちキのクニのオオヤビコのカミのみもとにイソガシやりたまいき。かれヤソガミまぎおいイタリテ、ヤさすときに、キのマタよりクキのがれてサリたまいき。

口語訳：八十神はこれを見て、また大穴牟遲命を騙して山に連れて行った。大きな木を切り倒して、その木にくさびを打ち込んでおき、その間に入らせてからくさびを打ち離したので、大穴牟遲命は挟まれて死んでしまった。御祖の神は泣きながら大穴牟遲命を捜し回り、死体を見つけた。その木を裂いて亡骸を取り出し、再び活かしてから、御子に「お前はこの辺りにいたのでは、いずれ八十神たちに殺されてしまう。すぐに紀伊国にいる大屋毘古の神のところへ行きなさい」と言った。行く途中に八十神たちに追いつかれて矢を浴びたが、木の股からすり抜けて逃れることができた。

「率＝入２山１（やまにいていりて）」。この山は、どこの山とも伝わっていない。前と同じ山ではないだろう。○茹矢（やをはめ）。「茹」の字は、諸本に「茄」の字を書いているが、それではどうにも解釈できない。そこで、ここでは取りあえず真福寺本に「茹」とあるのを採用した。そもそもこの段では、この字と後の「氷目矢」との関係が不明で、事件の詳細がはっきりしない。だがとにかく「茹」という字と解するなら、この字は「食である」と注され、また「牛馬に餌を食わせる」ともあるので、「はめて」と読むべきである。「はめ」は「はませ」の縮まった言葉で、伊勢物語の歌に「狐（きつ）にはめなで」とある「はめ」もこれだ。何かの間に物を入れることを「ハムル（はめる）」と言うのも、もとは「食（は）ませる」の意味である。【ここで「食」と書かないで「茹」の字を使ったのは、本来の文字遣いから離れすぎた感じもするが、ここでは物を食わせるのと違った意味であるから、文字を変えて書いたのだろう。】矢は普通の矢でなく、木に打ち込む器具（くさび）である。【次に「氷目矢」とある、その矢である。】そう考えると、事件の全容は二通りに解することができる。一つには、その「矢」は木に打ち込んで割れ目を作る物を言う。【ある人が言ったところによると、今の世で木を割るのが困難だと、柄のない斧を木口に挟んで打つのを「矢」と呼ぶそうだ。このことである。】茹（はめ）とは、木に打ち込んだことを言う、○「打＝立２其木１」は「そのキにうちたて」と読む。【「茹（はめ）」と言っておいて、また「打ち立て」と言うのは、言葉が重なっているようだが、この「打ち立て」は打ち立てて挟んでおく意味だ。】○「令レ入２其中１（そのなかにいらしめて）」とは、大穴牟遲の命をその木の割れ目に入らせたのである。【旧事紀にはこの下に「木」の字があるが、ここは「木」と言わなくても、その木の中ということは自然と分かる。だがこの木の割れ目はほんのわずかな隙間だったろうに、その間に人を入れるのはどうか、と疑う人もあるだろう。このことは、次の鼠の段で言う。】○氷目矢（ひめや）【旧印本や一本には「水自矢」とあるが、たぶん誤写だろう。ここでは真福寺本や延佳本によった。】は、木に打ち込んで挟んでおく矢である。「氷目」とは【字は借字で】木などの割れ目を言う。樋目という意味であろうか。【俗に「ひめわるる」、「ひわるる」、「ひびわるる」などと言う。「ひび」も「ひめ」の訛りだろう。和名抄に「ショウ（やまいだれに豕）は『ひみ』、俗に『ひび』」とあり、これも「ひめ」だろう。万葉巻十六（３８８５）に「比米加夫良、八多婆左彌、宍待跡（ひめかぶら、やつたばさみ、ししまつと）云々」とあるのは、狩に用いた道具のようなので、ここの「氷目矢」とはもちろん違うが、「ひめ」という名の意味は同じであろう。「八目の鳴鏑（なりかぶら）」というものは、矢先に幾つも穴があるのを言うので、「ひめかぶら」も、その穴を長く樋のように彫ったのを言ったと思われるからである。】もう一つの考えとして、「氷」の字は、「羽」の右の縦の画が消えて誤ったのであって、本来は「羽目矢」だったかも知れない。それなら木の割れ目に打ち込んではめたという意味の名である。○拷殺也（うちころしき）とは、木の割れ目にはさんでおいた矢を打ち離したとき、その木の割れ目が急速に閉じたので、その中に挟まれて死んだということである。○もう一つの考えは、「茹レ矢」の矢はかすがいのようなものか、木の切り口に入れて接合するようなものかということだ。【俗に「間（あい）の釘」というもので、両端が尖った釘を打ち込む。】それはいずれにしても木の切れたところに打ち込んで、仮に接ぎ合わせ、木として立てておくのだ。こういう意味なら、「その木を打ち立て」と読むべきである。【この「打ち」は軽く言い添えた言葉である。】「令レ入２其中１」とは、その仮に立ててある木の側に立たせたのだ。【これは山中の話なので、木がたくさんあるわけで、「中」とか「入る」とか言うのも変ではない。だが「木の下」とか「側に寄る」と言わず、「入る」と言っているので、やはり第一の考えの方が優っている。】「氷目矢」の名の意味は前述したのと同様だが、木を接ぎ合わせるものである。【この解釈では木に挟むのではないが、接ぎ合わせるものも同じ名で呼んだからといって、おかしくはない。】「拷殺」は、この矢を打ち離せばその木の切り口が離れて倒れ、圧死したということになる。【「拷（うち）」という語は、この方がよく合う。】上記二つの解釈のどちらがいいか、決めかねている。【以前はこの他にもいろいろ考えたことがあるが、今考えるとどれもよくない。延佳はこの段で「茹」の字を「架」の誤りではないかと言い、「矢に架け」と読んでいた。それは切り倒した木を矢で支え、仮に立てたという解釈である。しかし大木を支えるものを「矢」などとは言わないだろう。そういうことなら「架レ杙（クイにかけ）」などと書くはずだ。また彼は氷目矢を「ひめしや」と読んだが、それでは意味がよく分からないし、「し」を読み添える理由もない。師の考えも基本的に延佳の解釈と同様で、「氷目矢」については旧印本に「水自矢」とあるのを取って、「水」は「木」の誤りだろうと考え、「その木を矢から打ち離した」と読んだけれども、それでは「打離」の文字の置き所がこの記の他の例と違っていて少しおかしく、またその意味なら単に「打＝離２其矢１」とあるべきで、「その木を矢から打ち離した」と解釈すれば、くだくだしく、稚拙な文になる。】○「得レ見」は「みえて」と読む。この「得」は「見ることを得て（見ることができて）」という意味ではない。探して得た（見つけた）ということである。○「拆２其木１（そのキをさき）」。「拆」の字は、諸本で「折」を書いている。ここでは一本によった。切り倒した大木の割れ目に挟まれて死んでいるのを見つけたので、その木を拆（さ）いて死体を取り出したのである。ただし上記の第二の解釈なら、「折」かも知れない。大木の下で圧死しているからである。○取出（とりいで）は、割れ目から取り出したという解釈の方がよく合っている。○活（いかして）。ここでも前のように甦らせる方術（わざ）があったのだろうが、それは伝えなかったようだ。○此間は「ここ」と読む。○「爲２八十神１（やそがみに）」。「爲」の字は単に「に」と読む。【こうした「爲」を「ために」と読むのは漢籍読みによる誤りだ。】○木國（キのくに）。この国名の意味は字の通りである。【「紀伊」と書くのは、国名を二字とせよという定めによって、「紀」の「い」音を添えたのである。こういう例は他にも多い。】○大屋毘古神（おおやびこのかみ）は、五十猛（いだける）の神と同一であろう。それは書紀に「素戔嗚尊はその子五十猛神を連れて新羅の国に天降り・・・始め五十猛神が天降ったとき、木の種をたくさん持って降ったが、韓国（からくに）には植えず、すべて持ち帰って筑紫から植え始め、およそ大八洲の国の内に、植えないところはなく、ことごとく青山とした。このため『五十猛神』と讃え、大きな功績のある神としている。現在紀伊の国にいる大神がこれである。」という記事があり、また「素戔嗚尊の子、五十猛神、妹大屋津姫（おおやつひめ）、次の妹ツマ（木＋爪）津姫、合わせて三神は、またよく木を植え、紀伊の国に到った。後に素戔嗚尊は熊成（くまなす）の峯にいて、ついに根の国に入った」と見えていて、延喜式神名帳には紀伊国名草郡に伊太祁曾（いだけそ）神社、【名神大、月次・相嘗・新嘗】大屋都比賣（おおやつひめ）神社、【名神大、月次・新嘗】都麻都比賣（つまつひめ）神社、【名神大、月次・新嘗。伊太祁曾の「曾」は、契沖が「魯」の誤りかと言ったのも、ちょっと見にはそう思えるが、もう少し考えるとよくない。これは「五十猛（いだける）の有功（いさおある）神」ということである。「さお」を縮めれば「そ」になる。だから続日本紀、文徳実録、三代実録、和名抄など、すべて「曾」と書いている。また紀伊の国人もそう言っている。ただし彼らが「け」を「き」と言っているのは訛りである。この三つの神社は、もとは一つの神社だったのだろうか。続日本紀に「大宝二年の二月、伊太祁曾、大屋都比賣、都麻都比賣の三神社を分かち遷した」と書いてある。ところで、「熊成（くまなす）の峯」は、熊野（くまぬ）のことだろう。「なす」を縮めれば「ぬ」になる。これを「わになり」と読んで鰐淵山のこととする説は間違っている。】これらを考え合わせると、別の神とは思えない。妹神を大屋都比賣というのを見ても、その兄神だろうと思われる。【旧事紀に「五十猛神または大屋彦神という」とあるのは、そういう伝えがあったのか、はたまた例の推量で書いたのか。いずれにせよこれはよく当たっている。】このように木の種を植えて巡った神がいるので、木の国と名付けたのである。【出雲と木の国は、相通じる点が多い。まず伊邪那美命を伯耆の境にある比婆山に葬ったというのは、紀伊国熊野の有馬村に葬ったというのと同じことであり、熊野という地名もこの二国にある。意宇郡の速玉神社、牟婁郡の熊野速玉神社、意宇郡の韓国伊達（からくにいだて）神社、名草郡の伊達（いだて）神社、大原郡の加多神社、名草郡の加太神社、これらはみな同名である。たぶん上記の三�~が出雲から渡り移ったときの由縁だろう。書紀に「紀伊の国に渡った」とあるのも、須佐之男命が三�~を出雲から渡らせたのである。「その後」とあるので、そう思える。】木の用途は、家を造るのが主だから、大屋という名が付いたのだろう。【名草郡には「大屋」という地名も和名抄に載っている。またツマ（木＋爪）津姫も木に関係した名である。ツマ（木＋爪）の字は、字書に「四方が木である」と書いてある。万葉の歌（５０）に「眞木さく檜（ひ）の嬬手（つまで）」とあるのがそうだ。これを「抓」と書いているのは誤写だ。】この名については、禊ぎとの関連を論ずることもできる。それは次の須勢理毘賣（すせりびめ）のところで言う。ここで大穴牟遲神をこの神のところへ逃したのは、この神が遠祖須佐之男命の子孫であってゆかりがあるだけでなく、有功の神と讃えるからには、当時勢力のあった神なのだろう。【名草郡には刺田比古神社というのもある。これは外祖父の刺国大の神に由縁がないだろうか。あるいは、「田」の字は「国」の誤りではないだろうか。】○速遣は、「いそがしヤリたまいき」と読む。【速の字は、ここでは「すみやかに」とか「とく」と読むのはよくない、遣の字も「つかわす」と読んではよくない。】○覓追（まぎおい）は、追跡して行くことである。○臻（いたる）は追及（おいしく）ということである。【俗に「追いつく」ということだ。】これは大屋毘古神のもとにたどり着かないうちに追いつかれたのだろう。○矢刺之時（やさすときに）、【「之」の字は、旧印本および延佳本とも「乞」の字を書いているが、これは誤りである。ここでは一本によった。旧事紀も「之」と書いている。】矢刺（やさす）と言った例は、中巻の白檮原の宮（神武天皇）の段に「握２横刀之手上１、矛由氣矢刺而追入（タチのタカミをとりしばり、ほこゆけヤサシておいいる）」、また明の宮（應神天皇）の段に「彼廂此廂一時共興、矢刺而（そなたコナタもろともにおこりて、ヤサシて）」、下巻朝倉の宮（雄略天皇）の段にも「天皇大忿而矢刺、百官人等悉矢刺（スメラミコトいたくいかりてヤサシたまい、ツカサヅカサのひとどもコトゴトにヤサス）」など、多く見える。古言であろう。これは射ようとして矢を弓につがえることを言う。後世の軍記などに「さしつがえる」とあるのがそうである。○「自２木俣１漏逃而去（キノマタよりクキのがれてさりき）」。これは一時的に大樹の蔭に隠れ、その木の股から脱けだして、密かに逃げたのである。「木の俣」は新撰字鏡に「椏は江南で樹の分岐のことを『サ（木＋叉）椏』と言う。『きのまた』」とある。【和名抄では「サ（木＋叉）椏」を「またふり」としている。】漏（くき）のことは前に【伝五の七十七葉】で述べた。去の字は「さりたまいき」と読む。【ここは「いに」と読んではよくない。そのあたりの違いは、古言によく慣れて知るべきである。】